睡眠の最新情報~睡眠の本当の意味~
今回は9月に開催された産業精神保健学会に参加し興味深かった
「睡眠」に関することを御紹介したいと思います。
≪北里大学大学院 医療系研究科産業精神保健学の田中克俊教授の講義より≫
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何らかの睡眠の問題を抱えている労働者は30%を超えると報告されています
最近はコンビニの清涼飲料の棚にも”睡眠の改善”を謳う製品が
置かれるようになっています
睡眠不足によって引き起こされる弊害は様々で
メールの誤送信や、業務ミス、現業種では、焼けど、事故など
身体に関わるものが多いです
そして誰にも起こりうることで一番怖いのは
睡眠不足は発癌にも関わるということもあります
- 1:睡眠不足・不眠と病気の関係
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睡眠不足や不眠は糖尿病そして高血圧、生活習慣病との相互関係があります
 睡眠時間が5時間以下の人は高血圧、
 不眠症状は糖尿病のリスクが2倍ともいわれてます
 
 その理由としてホルモンでグレリン、レプチンというホルモンが影響を受けることも分かってます
 睡眠不足だとグレリンの生産抑制、レプチンの抑制が起こり食欲が増加することがわかっています
 これらの理由から病気のリスクが上昇するといわれてます
 
- 2:途中で起きてしまう睡眠不足(中途覚醒)への対策は?
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ズバリ「早寝・早起き」です
 というのも睡眠は ”長さ” ではなく ”質” という事がわかってきました
 つまり昼寝や居眠りしても、睡眠は補えないのです
 
 ではどういった睡眠がいいのかというと
 入眠してから間もなくおとずれる「ノンレム睡眠」がきちんととれているという事です
 
 ノンレム睡眠とは、寝てから3時間の間に入る深い睡眠です
 この睡眠は脳も身体も休ませることができる睡眠なのです
 ですから途中で起きてしまう方は、無理して寝ようとせず
 数日間、睡眠不足が続いてしまったら、眠くなる時が来るまでじっくり待ち
 眠くなったらぐっすりと眠る”という習慣をつけていくことがいいのです
 
 またずれてしまった体内時計は最近の研究によると
 1日10分程度しか遅れていないことも判ってきました
 このズレをリセットしたときは、太陽の光を朝に20分ほど浴びることでリセットできます
 
- 3:睡眠の目的(意味)とは脳の細胞をクーリングダウンすること
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人間が寝る理由…とは
 ”脳を冷やす” ことが主な目的! 人間は入眠する時に体温が下がります
 その時に下がり具合を急劇にするとノンレム睡眠がより深くなり
 グッと睡眠が良くなるのです!
 
 ではどのようにして急激に冷やすのでしょうか?
 
 その簡単な方法は2つほどあります
 このどちらか2つを実行することです
 
 1つは寝る前のぬるめのお湯(39度)に15分位つかること
 
 冬でもこのくらいの温度のお風呂に15分浸かると体はきちんと温まります
 逆に高温のお風呂に入ると、毛細血管が開き過ぎ
 今度は体温が中々下がらないので高温のお風呂は睡眠にとってはよくないのです
 
 2つ目は入眠3時間ほど前に軽い運動をして(ストレッチなど)体温を上げることです
 
 さらに、帰宅が遅い人は、お腹が空いていても遅い夕食は軽めにすることで
 消化器官に血液が集まらず、体温上昇を防げることも大事なポイントです
 
 一旦上昇した体温が入眠の祭に生理的減少で降下する角度が大きくなり
 一気にノンレム睡眠へと導いてくれるのです
 
- 4:意外と知らないカフェインの話
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~あるお茶の産地の睡眠薬と自殺率の関係~
 
 カフェインは摂取してから聴き始めるまで30分
 その持続時間は4~8時間と言われ
 人によっては12時間も持続するともいわれています
 田中克俊先生の研究でカフェインとレム睡眠の深さの研究があります
 
 以下 カフェインを毎日大量に摂取している方を対象として実験しました
 
 カフェイン摂取を止めても「睡眠が変わりない」
 という自覚を持っている被験者の実際の睡眠状態を調べると
 カフェインを取っているときの方が摂取してない時よりも
 明らかに、ノンレムが少ないといことでした。
 
 つまり、本人の自覚と裏腹に本当は熟睡できていなかったのです。
 
 昔の日本人は、日本茶は飲んでもせいぜいお湯飲み茶わんで1~3杯
 今ではペットボトルが500ミリリットル
 昔よりも絶対的に現代人は取り過ぎているかもしれません
 
 またお茶の産地で田中教授が関わった事例を以下に記載します。
 
 熊本県のある集落では、睡眠薬の服用率が非常に高く
 同時に鬱の発症例も非常に多く、毎年自殺者が出ていました
 
 村からの要請もあって、集落の担当の保健師さんも協力し
 東芝の腕時計型ウェアラブル・バイタルサインセンサを使用し睡眠状態の研究を行いました。
 
 睡眠は実際の状態と比較すると本人の自覚と反していることも多く
 それが行動変容などを行っていく際の障害にもなっています
 しかしデータ化して客観的に示すことで
 「実は良く眠れているから大丈夫」または
 その逆で「寝れてないのに寝れている感がある」
 ということもわかりました。
 
 また、その村はお茶の産地でみなさんお茶をたくさん飲まれるのですが
 夕方以降は控えるようにと保健師さんから指導した結果
 
 寝つきが改善し深い睡眠も増えるということを客観的にみることができ
 睡眠薬の使用を減らすことにもつながりました。
 
 睡眠自体も改善し、それ以来ずっと自殺者は出ていないそうですん。
- 5:入眠前にしていいこと、してはいけないこと
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☆入眠前にしていいこと☆
 入眠前の習慣を決めてそれを毎日行うこと。
 例えば”歯を磨いてから少し本を読む”とか
 ”ペットをなでる”などです。
 
 そうすることによって頭が”寝る準備だ!”と認識するのです。
 
 ★入眠前にしてはいけないこと…
 (ブルーライトは生殖器までも影響?)
 
 それは、スマホやLEDの入っているものを見ないことです
 (ベッドルームは黄色の光にするなど)
 いわゆる”青い光※1”を見ることによって
 メラトニンというホルモンが一挙に減少してしまうという
 ハーバード大学の研究があります。※2
 
 メラトニンとは?
 メラトニンには重要な役割があります
 その1つは上記にも出てきた脳の温度を下げること
 しかしその一方でがん抑制遺伝子の働きを弱めてしまうこと
 つまり癌の発生を高めてしまうとも言えるのです。
 
 更に、研究段階ですがメラトニンの投与は不妊治療にも効果があるとされているので※3
 パソコンやスマートフォンのブルーライトによるメラトニンの減少が
 女性や男性の生殖期の世代に影響を与えている可能性はかなり高いようです
 ですから、寝る前にスマホを見る行為は
 睡眠障害や不妊そして発癌率を上げるとも言えるのではないでしょうか
 
※1メラトニンは薄い青い光にも弱い) ※2Evening use fo light-emitting eReaders negatively affects sleep ,circadian timing ,and next-morning alertness.AMchang et al PNAS. ※3「生殖機能調節における活性酸素の役割」『日産婦誌』60巻9号日本産婦人科学会






