特定因子理論
特定因子理論とは、心理テストを用いたカウンセリングの基礎理論の事です。
20世紀初頭にボストンでパーソンズが始めた職業指導運動から発展したと考えられています。
ミネソタ大学進路指導プロジェクトのウィリアムソンはパーソンズの理論に基づき進路指導のために、心理アセスメントを提唱していたが、やがて学生の全人格の発達に心理アセスメントが有用な事に気づき、パーソンズの特性因子論を定式化しました。
これを特定因子論的カウンセリングといいます。
特定因子理論は、個人のパーソナリティを『知能・感情・興味・態度・価値観・性格傾向・対人関係』といった複数の特定が束になったものと考える理論、組み合わせや程度に強弱によって個人差が出ると考えられています。
「特定」とは、直接観察できる測定が可能な反応の事で、「因子」とは潜在的根本的構成概念、特性の背景であり、無意識的・抽象的なものと考えられています。
診断の対象は、「知能・適正・学力・興味・態度・価値観・創造性・性格・人間関係」で、分析方法は「因子分析法」とよばれ、無数にある特性のなかで、どの特性とどの特性がどの因子と相関性を持つかを統計学的に推論する方法になります。
ウィリアムソンは、「学生のあらゆる可能性を引き出すための援助」をモットーとして運動を展開し、学生生活全般を応援、相談に取り組むのに特定因子理論(マッチング理論)が用いて、高い就職実績例を挙げる事で特定因子論的カウンセリングを証明してみせました。
特定因子論的カウンセリングは、入学時に学生の能力が各種アセスメントで調べられ、その後、学生生活において心理的な困難や経済的な苦境などが起きた時、学生カウンセリングで援助の手が差し伸べられました。
つまり、進路指導だけでなく、通常の性格相談、人生相談についても心理アセスメントを導入したということになります。
このとき用いられたカウンセリングの手順は、
1.ラポールの形成
2.クライエントの能力を心理テストで測定する
3.問題を解決するするための行動計画づくり
4.計画の実践
5.終結期でカウンセラーは学生の実践がうまくいたかどうか経過観察する。
この流れは、診断して治療する、医学モデルに準じたものであったようです。
しかし、1940年代になると、C.R.ロジャーズがでてきて、「非指示的」カウンセリングを主張したため、ミネソタ大学関係者は、「指示的療法」と呼ばれて苦境に立たされることになります。