コロナ禍でカウンセリングの形態も変わる節目になるのかも

昨年に参加した臨床心理士会主催の跡見学園女子大教授宮崎先生講師のウェブカウンセリング勉強会での現状は
どのカウンセラーの業界もまだまだ対面カウンセリングが主流でした。

この頃は(コロナ禍以前)産業領域(企業向け支援をしている)でもウェブカウンセリングはスタートしておらず
システムを開発中ということでした
(現在、電話やメールも増加しており、一部ではメールなどWeb上でのカウンセリングもあります)
カウンセリングに限らず色々な面でアメリカは日本の先をはるかに進んでいるといった現状ですが
実際のアメリカのカウンセリング状況は“Webカウンセリング”という理念や
実践のウェブカウンセリングは1995年ごろから始まったようです。
しかし当時はカウンセリングを電話やインターネット上で行うという事は日本を含む
世界の心理の世界ではありえないことと捉えられていました。

とはいうものの、今や若者は対面のコミュニケーションが苦手になりつつある状況ですし
電話さえも持たない若者もおり、今後はオンラインカウンセリングが重要な位置を占めていくかと思われており
特に今後はSNSでのカウンセリングの需要も見込まれているようです。

では“オンラインカウンセリング”の種類は一体、どのくらいあるのでしょうか…?!
電話、メール、ライン、チャット、ビデオ通話、スマホ、タブレットなどがあります。

今、行政もボチボチと小、中学校の児童生徒に対して心の相談をメールなどで呼びかけています。
そのお陰で今まで、相談件数があまり無かったのが4割増しになってきているそうです。
また国の機関がどのくらいの需要があるのかを調査しています。
千葉と東京のある区での実験的なSNSを通してのカウンセリングでは
メールカウンセリングの時よりもSNSを通してのカウンセリンのアクセス数は6倍にも増えていました
こういったことを鑑みると、今後はカウンセリングの導入としても十分に効果があると言えます。

では次に、対面カウンセリングとオンラインのカウンセリングの違い(長所と短所)について紹介します。
対面カウンセリングの長所として“実際に会う”ことを通して
クライアント(カウンセリングにくる方をクライアントと表記)の対面での緊張程度や、雰囲気、視線、仕草などがわかります。

また人によっては予約日までにいろいろなことを内省(自らの中で自己や他人、環境に関して想いを馳せる)して症状が軽くなったり
自分で解決への糸口が見えてきたりすることもあります。

更に少し専門的なことになりますがカウンセリングには“沈黙”というものがつきものです
沈黙?と思われるかもしれませんが、例え皆さんばこういった経験をしたことないでしょうか?
親から「なぜこんなことしたの?」あなた「………」
この沈黙の「………」の間は何も考えていない訳ではなく、何か考えている間なのです
この間が重要で、この間で気づきが発生するので、とても大切なのです
しかし、オンラインカウンセリング、特にラインやチャットでは沈黙が使えないのが難点です

対面カウンセリングの短所としては、カウンセリングの場所まで行かなくてはならず
交通費、移動時間などを費やすという事があります

一方、オンラインカウンセリングの長所では、その逆で、移動時間や移動のコストがかからない
対面よりも緊張は少ない、離れているカウンセラーにも会える
メールなどの文字にすることで客観的に自分がどのように感じているかを把握できる
またケースによってはカウンセリングコストが少ないこともあげられます

オンラインカウンセリングの短所としては、やはり効果のほどが低い(沈黙ができず、内省がすすまない)
メールなどに関するとセキュリティに関して100%の保証ができない、危機介入ができない、時間のズレが生じるなどです

世界のオンラインカウンセリングの研究からの報告によりますと
中程度のうつ病の患者さん62名に認知行動療法
(日本では保険適応しており、自分の行動などを客観的に記載し行動する療法)をした結果、
 対面で治療を受けた患者さんは半分の50%が症状改善したのに対し、
 オンラインでのカウンセリング(認知行動療法と同じようなやり方で書面と口頭)で治療を受けた場合も
 53%改善していました(2013年チューリッヒ大学の研究より)

しかし、この数値はあくまでも認知行動療法というやり方でのデータであり
他の療法にて同じような改善が見られるか否かはわかっておりません
一番大切なのは、患者さんがカウンセリングを受けたいという気持ちで
そして、今の状況を変えたい、またはなにかモヤモヤしている気持ちや
悩みを自分でわかり解決してきたいということが大切です
そのための手段は後からついてくればいいのです
とはいうものの、対面カウンセリングの効果はやはり大きく、Web上や電話カウンセリングから入っても
対面カウンセリングにその後移行することによって、問題が早期に解決するケースも多いのです

また興味深い事として、日本は占い市場が2兆円市場といわれているのに対し
カウンセリング市場は350憶円といわれているそうです(オンラインカウンセリングとメンタルヘルスケア |川端 野乃子著)

需要が少ないわけではなく、日本人の殆どが心の問題や不安が生じると安易に占いに依存したり
心療内科へ通院し内服薬と通院をするのが主流なのです。
アメリカでは5人に1人が何らかの精神疾患を患っており、
メンタルヘルス専門家、すなわち、精神科医、サイコロジスト(日本でいうと近い職種は臨床心理士や公認心理師)に
かかっているというデータがあります。
(平成30年度海外研修報告書 「米国のメンタルヘルスに関する取り組」JETプログラム事業部調整課 西原 平成31年3月)

このことからも、今後は日本人もきちんと自分を分析、内省しこれからどのように人生100年を
生きていくかを検討する時代に入っていかねばならないのかもしれません。

by 公認心理師 / 臨床心理士 木村晃子